日本財団 図書館


 

きている。
国内においては、一連の規制緩和や消費者保護の一環として、平成8年4月より、「旅行業法」が改正されて、旅行業の種別が変更され、旅行業第1種から旅行業第3種まですべての旅行業者で、海外旅行と国内旅行両方の取り扱いが可能になる一方、旅行業の登録基準が緩和され、新規参入はより容易になった。また、運輸大臣が認可する「標準旅行業約款」も大幅に改正され、旅行業者に「旅程保証」を義務づける等、一層の旅行者保護が進められることになった。さらに、平成10年にはコンビニエンスストアにおけるパッケージツアー商品の販売も認められる方向にあり、その布石として、JTBとサンクスアンドアソシエイツ、近畿日本ツーリストとam・pm、HISやPTSとファミリーマート等の提携と予約の取り次ぎがスタートしている。
国内航空業界においても、既設の3社に加え、HIS等による「スカイマークエアラインズ」等の新規参入がほぼ確実になる等、環境の変化は著しい。近い将来日本の国内航空市場において厳しい低価格競争や顧客獲得競争が始まる前触れである。
海外においては、アメリカで外貨収入780億ドル(約8兆2千億円)を生み出した産業として、クリントン政権はすでに「観光重視政策」を公表しており、航空会社の自由な相互乗り入れを規定する「オープンスカイ条約」の推進を打ち出し、強力にこれを推進しようとしている。また、1990年代前半に厳しい競争に直面した航空業界においては、生き残りと経営の効率化をかけて、アメリカン航空と英国航空、ユナイテッド航空とルフトハンザ航空、ノースウエスト航空とオランダ航空、デルタ航空とエールフランス、スカンジナビア航空とカナダ航空等、グローバルで積極的な提携や大連合が、既に始まっているところである。

 

小規模旅行業者の生き残り

全く新しい発想が必要な小規模旅行業者
規制緩和が進展する中で、旅行業法が緩和され、旅行業第3種の登録は今まで以上に簡単になった。新規参入者は続々とその数を増やしているし、旧来の経験や勘だけに頼った経営の事業者は、厳しい競争に耐え切れず、どんどん撤退したり廃業して行かざるを得ない状況にある。今後予想される我が国の旅行業界は、アメリカでもそうであったように、大手旅行業者は、規模の利益を追求してネットワークを飛躍的に拡大し、ますますの寡占化や中小旅行業者の系列化をめざし激しい競争をする結果、数社に限定されることになろう。また、中堅旅行業者は、その一部が、特色があり競争力のある専門的旅行業者として牛き残ることになろう。そして圧倒的な大多数を占める小規模旅行業者は、情報化を進めてコストがかからない体制を作り上げ、持ち前の機動性を活かして素早く時代に適応しながら、新しく魅力溢れるサービスを創造し、特定分野での専門性を活かして生き残りをかけなければならない。
数量的に大手旅行業者に対抗できない小規模旅行業者は、仕入原価の差から価格的には大手旅行業者とは競争ができないことから、業務提携ネットワークを構築して小規模旅行業者が共同して仕入れを行うことで原価を下げて競争力を確保するか、大手旅行業者が参入できない独自の分野に特化するかの選択に直面している。奥が深く大手業者には真似の出来ない高度な専門分野を確立している小規模旅行業者同士が、それぞれの事業の独立性を維持しながらネットワークすることに勇気をもって取り組まねばならない。はっきりしていることは、今まで通り工夫もなく単純な低価格競争を続けていては、小規模旅行業者は生き残ることができないことである。
規制緩和が進行し情報化社会が進展する等、大きく変化する環境の中で、旅行業者は今ま

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION